いよいよ3日目、型に入れておいた生地がしっかり膨らんでいます。 ほぼ1日時間をかけてゆっくりここまで発酵させるのには、 消化をよくするということの他に、お砂糖を食べて育つ天然酵母が パネットーネのお砂糖をほどよく消化する時間でもあるのです。 そのためバーギズのパネットーネはあまり甘くありません。 天然酵母がお砂糖を食べる時間が20時間あるからなのです。 これ以上時間をおくと甘さがさらに控えめで 今度は酸味がでてきます。このあたりの加減もバランスですね。 焼き時間はほぼ40分ほど。 ただ天然酵母の生地は、気温や湿度など日によって変わるので、 この時間、というのがないそうです。 そのため、目が離せません。 40分ほどの間、どんどん良い色になり膨らんでいきます。美味しそう! 中心部の温度を測って、焼き上がりが大丈夫かどうかチェックします。 焼きすぎるとパサパサに、一方焼き方が足りないとカビが生えてしまいます。 OKだったら、ひとつずつ串刺しにしてこのように逆さまにします。 逆さまにしないと潰れてしまうのです。 6~7時間はこのまま、袋に入れるのは10時間ほど経ってから。 月曜日の朝4時から天然酵母作りを始め、水曜日にやっと焼き上がる。 ビール酵母や添加物を使えば、ずっと短時間で発酵し失敗もない。 天然酵母のように日々状態が変化することもないから、 毎日同じように短時間で決まったように仕上げられる。 それでも彼らは昔ながらの膨大な手間と時間をたっぷり使った方法で作り、 考えられる限り最高の材料を使ってパネットーネを作り続ける。 こんな大変なのに笑顔たっぷりで、ちょっとジーンとしました、、。 いつも良い笑顔のファビオ。その働き者ぶりに感嘆!
一度ファビオのおばあさんに市場で遭遇しました。 80歳の今も野菜と果物を市場で元気に売っているのです。 どうやらファビオは、おばあさんの血を引いているらしい、、。 これだけ大変な仕事を笑顔でこなせるって素晴らしい! 3日間彼らと一緒にいて、とても良い刺激をたくさんもらいました。 仕事への愛情、真摯な姿勢、良いものを作ろうという心意気、、。 肩に力を入れずに、ごく自然にそうした原動力で動いている感じ。 そうしたものを笑顔とともに、ヒシヒシと感じられ、心の栄養を 彼らからたくさん受け取りました。3日間ありがとう、ファビオ、リカルド! 最後に焼きあがったパネットーネの前でパチリ。 さぁ彼らのように、私も楽しく頑張っていきましょう!
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パネットーネ工房での修行、2日目です。 修行と言っても、作る方でなく理解する方ですが。 朝工房に入ったら、昨晩の生地がおいしそうにたっぷり 発酵していました!プルプルです。 ボックス3つ分をインパスティトリーチェ(攪拌器)の中へ。 まず1分ほど回して、馴染ませます。 セミインテグラーレ(玄米でいうと5分つき)の粉を足して、 1時間ほど攪拌させていきます。 その間、次の材料の準備を。朝の儀式とも言える、たまご割り。 ただし、2日目(2回目に足す)黄身は、初日の1/3ほど。20kg=100個ほど。 全部で420個ほどの黄身を使うことに。 500gのパネットーネで例えると、ほぼ3個を使っていることになります。 だいたい1時間ぐらい経つと生地の表面が滑らかになり、 最後の黄身を投入。次の材料の準備に入ります。 手に入る一番良いバニラビーンズを選んでいるというファビオ。 直前に鞘から外して、たっぷり砂糖と混ぜ、生地に混ぜていきます。 オレンジのシロップ漬けは、自家製。シチリアの有機農家からの取り寄せた オレンジの皮をまず蒸して、砂糖1:水1でシロップを作り、 50度の温度設定したコンテナーの中に1ヶ月入れてつくります。 これを全部手で切っています。美味しさが違うそうです、、、。 1月にこの作業をします。瓶に入れたらグルコースをシロップに加えます。 グルコースを加えないと砂糖が結晶化してしまって欲しい状態にならないそうです。 ただしグルコースはオレンジピールの中には入っていきません。 オレンジの皮から水分がでて砂糖だけが入っているので、 瓶で保存する時点では、もうオレンジの皮に入る余地がないのです。 そして昨晩工房を出る前に、余分なシロップを切るよう瓶の蓋を開けて 逆さまにしますが、その際にシロップに含まれたグルコースもでていきます。 しかしながら一括表示にはグルコースも原材料に記載しています。 レーズンはオーストラリア産のシックスクラウン最高ランクのものを。 美しい琥珀色です。亜硫酸塩(酸化防止材)が入っていることが多いレーズンですが、 その代わりにひまわり油がコーティングされいます。 こちらも昨晩お湯で綺麗に洗い流いし、朝味わったら、ふっくら、しっとり。 パネットーネ生地が仕上がる最後の最後、攪拌器を回してから2時間経とうとしている頃に、 レーズンとオレンジのシロップ漬けを加えて均一に混ぜます。 さぁ重さを測って成形し、型に入れていきます。 私に見せてくれるだけのために、3つ750gのパネットーネ(イタリアでの標準サイズ)
を準備してくれたファビオ。型に入れたら明日の朝までほぼ24時間、14度の ストレージに入れて、低温でゆっくり発酵させます。 こうすることで、天然酵母が時間をかけて粉の繊維を断ち切り、 食べた際の消化を良くします。 さぁ、3日目の明日はやっとオーブンへ! やっぱり出張を急遽延ばした甲斐がありました。 今年もいよいよパネットーネの季節です! BAGHI'S バーギズのパネットーネ工房にやってきました。 今年3年目ですが、製造工程が80時間前後と長く、いまだ まだすべての工程を見きれていないので、今年こそ! 工房についた途端に香りのよいバターの香りにクラクラ。 早速試食したパネットーネがしっとりと風味よく、 自家製のオレンジの砂糖漬けもまた美味しすぎて、 ランチ替わりにペロリ。 これでミラノに帰っても悔いがないぐらいの美味しさ、、、。 私がミラノから半日かけて到着したときには、すでに 100年以上生き続けている天然酵母が9時間の発酵(3時間x3回)を 終えていて、パネットーネ職人のファビオは生地作りに入るところでした。 写真左上が発酵した様子、右上がその天然酵母を切りとった様子。 天然酵母は9時間以上発酵させないように工夫しているそうです。 なぜならば発酵しすぎると酸が強くなり、 また本来の強さがなくなるとのこと。面白い、、。 さぁいよいよ生地作り!水を入れて、天然酵母を入れたら、 卵を入れて、インパスティトリーチェ(捏ねる機械)にかけ、 その後、お砂糖と粉をいれます。 バーギズの凄さはまず原材料の豊かさ。 卵は近所で産みたての卵を。写真で320個分です。 サフランを入れているのか?と聞かれることもあるほどの 鮮やかな色は、この黄身の色なのです。 この卵の凄さは、鶏たちが気持ちよく過ごせるように 音楽をかけたり(ただしテクノはNG)、清掃も頻繁にして 私が訪問した時も信じられないことに全く匂いがしなかったことからも 品質を想像していただけるかと。 鳥インフルエンザ以降、屋外で飼うことが禁止されましたが おおきな屋根の下、鶏たちにとってできる限りの幸せを考えている パオロさん。冬は鶏たちがよく食べるので、黄色味が濃く、 夏は暑くて食べないので、色が薄いそうです。 今年はさらに品質がバージョンアップ!今まではベルギーのプレミアムと いわれる高品質のバターを使っていましたが、オランダの 小さな生産者のバターに今年は変更になりました。 その決めては香り!そして生クリーム分がさらに多いそうです。 今日一番の衝撃はベルギーの澄ましバター。バターと言っても、 澄ましバターまで使っているなんで、想像もしておらず絶句。 相当高いでしょう?と聞くと、通常のバターに2倍以上とのこと! こんなことしている人、他にいるの?と聞いたら、 ほかには誰も知らない、と。そりゃそうでしょう、、、。 相変わらず常軌を逸しています、、、。だから心底敬愛しているのですが。 粉も彼らならではのこだわりが。イタリア産であることはもちろん、 石臼で挽いたセミインテグラーレ。 つまりお米でいえば、5分付き玄米のようなもの。 胚芽の栄養と風味が豊かだからチョイス。 セミインテグラーレはその分、胚芽を含み重い粉。 ただでさえ非常に難しいと言われているパネットーネ作りにおいて これを扱える職人の技は並大抵のものではありません。 粉を入れて10分ほどすると、右のような感じに。 ファビオが“聞こえるかい、プパッ、プパッって言い始めたよ。 卵が欲しいって言ってるんだよ”と。 卵は何回かに分けていれないと、まとまらなくなるそうです。 右はこね始めてから30分ほどたった生地。 卵を加えながらこね続けていくと、左のような空気が入った生地に。 ここでいよいよバターを投入します! バターがすっかり馴染んだら、いよいよハイライトの澄ましバター! よく馴染んだら、生地を取り出します。こね始めてからほぼ1時間10分ほどでした。 びよよよーんと伸びる生地を発酵用のボックスに入れたら、
今日の工程はまず終了です。明日の朝までこの生地を じっくり発酵させて、第二工程にはいります。 右は明日活躍する天然酵母。3時間x2回発酵していますが、 明日生地作りの前に、3回目の発酵をさせて、その天然酵母で 第二段階の生地作りです。 (ついいつもお酒の三段仕込み見たいと思ってしまいます) 天然酵母はファビオが師匠から受けついた、100年以上経っているもの。 日々お世話して、生き続けています。イタリアでパネットーネ酵母と 言っても誰も知りません。どうやら日本だけの呼び方のようです。 本当は明日ミラノに戻るはずでしたが、予想外にも普通のサイズの パネットーネも焼きあげるというので(今回のパネットーネ作りは日本向けでは なく、彼らのヨーロッパのお客様のリクエストで小さなサイズを焼くそう)、 この際、3日目まで残ることにしました。 なおパネットーネはサイズが大きいほど、しっとりして美味しいのです。 日本向けは10月下旬からスタート予定です! まずは初日、お疲れ様でした! さ今日は久しぶりにアドレナリンがフルにでた感じでした。
「どうしても紹介したい人がいるんだ、チーズと食材店のすごい店を ピエモンテの小さな町でやっていてね。彼のチーズをぜひ食べさせたい。」 そう聞かされ続けて5年ぐらい経った気が? その噂の彼がチーズを持ってミラノにやってくるというので、 急遽のディナーに呼んでもらったのでした。 まずフレッシュチーズのRobiolaロビオーラと Gorgonzolaゴルゴンゾーラをスプーンにひとすくい。 早く味わったみなが一斉に“う〜〜〜〜ん、、、”と目を閉じて唸るのを 横目にみつつ、私もさっそくチーズを口をに運んでみました。 まずロビオーラ。はそれはもう形容しがたいほどフレッシュで、 澄んだミルク味が口に広がり、溶けてしまいそうな美味しさ! 次はゴルゴンゾーラ。えええええっ!? ゴルゴンゾーラってこんなに美味しかった?? つっかかるものが何もなく、まろやかにすぅーっと溶けています。 “Spettacolare! とんでもなく美味だ!”横で友人が声をあげる始末。 "なんなのですか、一体これは!?"と目を丸くして彼に聞くと、 昔ながらの製法でいまも作り続けるチーズ職人さんやサラミ職人さんを 探しては彼らから直接仕入れ、自分の小さな店で売っているとのこと! すごいすごい! 今やゴルゴンゾーラの中小の工房はほとんど大手に吸収され、 彼が惚れ込んでいるチーズ職人さんなどは奇跡のような存在らしいです。 実際彼の年配のお客様方は、このゴルゴンゾーラは 子どものとき食べたゴルゴンゾーラの味がする、とおっしゃるそう。 美味しさの秘訣は、通常の発酵温度より1.5度低くして、 長い熟成させるそう。もう本当に夢の味。 ピエモンテまで通わなくはならないではないか!と思わせるほど。 その後の熟成チーズもキツさや塩っぽさがなく、まろやかで、 通常、チーズの量があまり食べられない私でも、 これだったらいくらでも行けそう、、。 すべてのチーズの印象が、どれも舌にお腹に軽やかなのです。 早速、彼と私で食のオタク同士、すっかり意気投合! 私からはパンテレリア島の生産者・ボノモ さんの ジビッボぶどうのスプレッドの製法や、そしてモスト漬けのことを話したら、 ぜひ紹介してくれ!と彼。 レモンマーマレードの作っているビデオも、嬉しくてたまらなそうに 見ていました。 ペペロンチーノとオリーブの実を一緒にして搾るオリーブオイル にも目を丸くして、うわーこれぜひ食べさせて!と。 また私たちが紹介しているバーギズのパネットーネに使う、 卵の話から(鶏に音楽を聞かせてあげていると伝えたら、 卒倒してました。また1日1000個もの産みたて卵を手で 割っていることも。"黄味だけ詰めた紙パックを買わない、 そんな菓子職人がまだいたのか!"と彼も興奮)、 100年間生き続けている天然酵母の話や、 石臼でひいた5分つき小麦の粉のこと、膨大な時間をかけて 昔ながらの手法で丁寧に作っていることなど、、、。 彼はもうすぐ入ってくるという、モルタデッラやブレザオラの製法や アルタムーラのパン、ロマーニャのピアディーナの職人たちについて 語ってくれ、オタク同士、おおいに盛り上がり続けました。 これはもうお互いに食の情報を共有し合うしかないね!と いうことに。 イタリアのすごいところは、多分一生かかっても 網羅することがでいないだろうぐらい、食文化が多種多様なこと。 だから決して飽きることがないのです、本当に幸せなことに。 彼の膨大な知識たるや、どんなに未知の世界を私に教えてくれることか。 とんでもない同士ができて、これから知るであろう食の探訪が もう楽しみでなりません〜。 久しぶりにアドレナリンが全開、興奮した夜でした。 18年前の11月、たまたまオリーブの収穫の時期に訪れたカペッツァーナ 。
その時このテラコッタの甕に入っていたオリーブのジュースの味に 取り憑かれたようになり、食材屋のちいさな一歩が始まりました。 そんな経緯から、テラコッタの甕には 美しさに惹かれるだけでなく、個人的な想いもあります。 100年以上の古いものもあるこの伝統的な甕に 搾ったばかりのオリオ・ヌオヴォ(新オイル)が入っている様子は なんど見ても胸が高まります。 昨年、日本向けのオリーブオイルはテラコッタの甕から ステンレス製のるコンテナーに変更となりました。 真空にでき空気に触れる量が減るので、酸化しにくくなり 当然品質はさらによくなります。 かなりのコストをかけての品質に対する心意気なので、 本当にありがたいことなのですが、ちょっと複雑でもあります、、。 素晴らしい味わいに心底惚れ込んでの輸入でしたが、 それと同じほど、トスカーナのオリーブオイル文化にも 惹かれていたのだな、と。 この古い甕から注がれるロマンのようなもの、、。 それも含めて、カペッツァーナがとても好きなのだな、と。 そんな想いを巡らせている折、 カペッツァーナ の搾油所を初めて訪れたときに聞いた ボナコッシ伯爵の言葉をふと思い出しました。 “(オリーブオイルについて)伝統的な手法という言葉は、 耳にはあたりが良いけれど、舌には決して喜ぶべきことではない。 品質向上のためには、常に技術革新に取り組むべきだ。” 搾油所の機械のことばかりだと思っていましたが、 オリーブオイルに関わるすべてに当てはまっていることに いま気づいた次第です。 愛するテラコッタの甕の風景はずっと残っていてほしいですが、 数年前に亡くなったボナコッシ伯爵の言葉どおり、 新調した最先端のステンレンスコンテナーによく感謝し、 今年もお世話になろうと思います、、。 |
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