Pastificioパスティフィーチョとはパスタ工房のこと。 イタリアには家族単位で営んでいるようなパスティフィーチョは各地にありますが、私たちが日本にご紹介しているマシャレッリ は、1867創業・150年以上もの歴史を誇り、"イタリアで一番古いパスタ工房のひとつ"として表彰されたこともあります。(上記は1936年の工房の様子) かれこれお付き合いも15年ほどになるマシャレッリ 。 イタリア以外の市場への取引は私たちが初めてだったということもあり、お互いに特別な想い入れがあります。 いまは少しスタッフが増えましたが、基本的に家族が総出で日々パスタづくりに励む、まさに家族経営。 今では5代目のアゴスティーノが立派に現場を取り仕切り、利発で働きものの嫁・キアラが発注と出荷を取り仕切っています。イタリア人のイメージとはほど遠い、寡黙で実直という言葉がぴったりの4代目のオラツィオ氏。働き続けた先代をとても大切にしている現場の雰囲気に、気持ちが温かくなります。 彼らがごく普通だと思って長年当たり前にしていることは、実はどれだけ希少なことか。 いくつかポイントをあげてみたいと思います。 1. 100%イタリア産小麦 機械で大量にパスタを生産するには、グルテンの強いカナダ産小麦を混ぜると、とても扱いやすくなるそうです。 そのため100%イタリア産小麦を使っているパスティフィーチョは、実は少ないのです。 大手になればなるほど、カナダ産小麦を使う割合が増えていくかもしれません。 イタリア産100%の小麦でおいしいパスタを作るには、職人としての豊富な経験も必須です。 2.国立公園の湧き水を使用 パスタの材料はセモリナ小麦と水。水はパスタの品質にとても大切なファクターのひとつ。 まるで日本酒づくりと一緒ですね。 マシャレッリのパスタ工房を背に、マエッラ山脈がそびえていてそこには豊富に清らかな水が湧き出ています。国立公園でもある、このマエッラ山脈の清らかな水を使って、代々パスタを作っているのです。 アブルッツォ州はディチェコなど有名パスタメーカーがいくつかありますが、その重要な要素はお水だと教えてもらったことがあります。 3. ブロンズ鋳型 ブロンズの鋳型でパスタを抜くと、表面がザラザラしてソースがよく絡むのです。 ブロンズは取り扱いや手入れも簡単ではなく、大量生産には不向きです。 大量生産の大手は、テフロンなどの取り扱いやすい型を使っていることがほとんどです。 ブロンズ鋳型の扱いや維持には手間はかかっても、変えがたい美味しさの秘密があるのです。 4. 低温での長時間乾燥 マシャレッリ は週に2~3回しかパスタを作りません。というか作れません。 なぜかというと、小麦の風味がしっかり残るよう、乾燥にたっぷり時間をかけて一回の乾燥に2日間必要だからです。 私・小林がイタリアに来るきっかけにもなった食科学大学のイタリアンガストロノミーの修士過程の勉強をしていた際、ある大手パスタメーカーを訪れたことがあります。 その会社では、パスタ製造すべてに8時間ぐらいだと言ってたことを記憶しています。テフロンの抜き型で、熱風を吹きかけながらパスタを乾燥させていた様子を覚えています。 マシャレッリ は低温でじっくりと乾燥させます。 その時間は実に乾燥だけで36時間から48時間!パスタ全体の製造時間はさらにそこから時間がかかるわけです。 一度パスタを製造すると、乾燥室をパスタが2日間占領します。 温度は40度ぐらい、かつての天日干しで乾燥していた頃のように。 じっくりと乾燥させたパスタや小麦の風味がしっかり生きています。 5. 職人のノウハウ いまも4代目のオラツィオ氏が製造現場で若者たちを指導しています。 プリミティブともいえる長きに亘りパスタを生み出してきた年代物の機械は、フルオートメーションで湿度や温度も管理できるものとはかけ離れています。それだけに味もありますが、安定しておいしいパスタを仕上げるには、日々かわる温度や湿度、その年の小麦の状況などをすべて考慮して判断できる経験値が必須なのです。 いまは5代目のアゴスティーノも随分頼もしく見えてきました。 アゴスティーノは夜中に一度起きて、パスタ乾燥室でパスタの乾燥状態を必ずチェックするそうです。 愛がないとできない、とぽろっと呟いていたのが印象に残っています。 6. 茹ですぎても、冷めても、それでもおいしい マシャレッリ のパスタを茹でるときは、あまりしっかり時間を測りません。 というのは少し茹ですぎようとも、アルデンテでしっかりとしたコシを感じる仕上がりだから。 そして少し茹ですぎたぐらいがもっちり美味しく感じるパスタです。 小麦の風味を存分に満喫していただけます。 もう一つの特徴は、マシャレッリ のパスタは冷めても十分おいしくいただけること。 素材を厳選し、時間をかけて丁寧に作るということは、結果が随分違うものだなぁ、といつも感心させられます。 7. クオリティと価格の優れたバランス
以前、イタリアの食の権威雑誌”ガンベロロッソ”で、品質に対し価格がお値ごろという、お値打ちパスタの1位に輝いたこともあるマシャレッリ 。150年も愛されてきたには理由がしっかりあるのですね。 こちらのホームページでパスタづくりの様子のビデオが流れているのでぜひご覧ください。 https://www.pastificiomasciarelli.it/
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シチリアに大切な友人たちがいます。ロベルタとアントニオ。もうかれこれ、10年近くになるお付き合い。 シチリアはドンナルカータという海沿いの小さな町で,“CONSIGLIO DI SICILIA コンシリオ・ディ・シチリア”という魚料理がとてもおいしいレストランを営んでいます。 アントニオはこの町で生まれ育ち、レストランはもともとはおばあさんの家。 一方、年上女房のロベルタはフランス国境近くで生まれたマンマ、ベネツィア出身の父親という両親の下で育ち、その後ニューヨーク、パリ、ローマと暮らしたコスモポリタン。著名なフードジャーナリストでもあり、最近は小説も書くマルチな女性。この世界をまたにかけて活躍するロベルタがまさか、シチリアの、それも小さな町で活躍するシェフと結婚するなんて!友人たちは大騒ぎ。もちろん感嘆の気持ちを込めてですが。 ロベルタと私の出会いは、ロベルタがミラノに来る度に催される、仲間うちの気軽な夕食会。 彼女の前向きでオープンな性格、皮肉なツイストがある知的なユーモアなどの独特な魅力に惹かれ、何度も会ううちにすこしずつ友情を深めていきました。 アントニオは日本の食文化にとても興味を持っていて、日本から彼にゆずを持ちかえって送ったり、和の食材について質問に答えたりと、食の情熱をわかちあう仲間となりました。とてもシャイなので、ロベルタなしで二人であれやこれや喋るようになったのは、つい最近。いまやシチリアの食のことをはじめ、何かあると気軽に相談できる仲となりました。 彼らの町のすぐ近くで栽培されている、ゴールデンイエローのダッテリーニトマト。使い方のアドバイス乞う相手にすぐアントニオが浮かびました。NHKより取材していただけることになったので、信頼できる彼が近くにいてくれたのは、本当に幸運でした。シチリアも広いというのに、ラッキーでした。 シチリアはコロナウイルスに関し、北に比べて落ち着いていましたが、そうは言ってもロックダウンはイタリア全土で。レストランを持つ身で、どんなに大変な時期を過ごしたのだろうか、と心配して電話したら、良い意味て拍子抜け。閉めていた時期はいずれにしてもオフシーズンだし、その間、いろいろと準備することもあったし、Fantasia妄想も膨らませた。しかも今は大いそがし!新しいスタッフを雇い入れたほどよ〜、と電話越しにいつもの明るい調子のロベルタ。あぁ、よかった! シチリアのラグーサ方面にいらっしゃる際には、ぜひぜひロベルタとアントニオのレストランに足をお運びください!おいしいシチリアの海の幸、アントニオの絶品カンノーリをぜひ味わっていただきたいです。 Consiglio di Sicilia Via Casmene, 79, 97018 Donnalucata, Scicli RG 340 944 8923 [email protected] NHKの取材のときに、アントニオに教えてもらったレシピを遅ばせながらご紹介させていただきます。 まずは、ダッテリーニのイエロートマトソースから。 Spada alla matalotaLinguine “Sole e mare”
太陽と海のリングイネ 海はムール貝、太陽はゴールデンイエローのダッテリーニ 材料 2人分: リングイネ150g 殻付きムール貝500g シチリア産カラフルトマト(ダッテリーニ) ゴールデンイエロー 190g 1瓶 にんにく2片 バジリコの葉 7枚 ローリエ1枚 良質のオリーブオイル(できればトンダイブレアのオリーブオイル=ザハラ ) 塩 (お好みで)生の唐辛子 白ワイン 1/2カップ 作り方: 1. フライパンにオリーブオイルを敷き、にんにく1片(切らずにそのまま)と好みで唐辛子を入れて香りをだす。 2. 1.にゴールデンイエローのトマトソースを加える。ローリエ、バジリコ5枚を加え、4〜5分温める。 3. ムール貝を準備。鍋に大さじ2のオリーブオイルを温め、1片のにんにくを入れる。 4. ムール貝を殻ごと入れて、白ワインを入れる。中火で蓋をしてムール貝が開くまで3分ほど調理する。 5.殻が開いたら火からおろし、殻から外したムール貝をボール入れておく。 6.鍋に3リットルの水を入れ、塩を少し。沸騰したらパスタを入れ、調理時間の半分ほどを目安に茹でる。 7.ボンゴレを調理した際と殻から外した際の出汁を漉しておいておく。 8.茹で汁2杯ほどとともに、半茹でにしたリングイネを引き上げ、フライパンにムール貝の実、ムール貝の出汁、リングイネを合わせてフライパンに入れる。中火でアルデンテになるまで火を入れる。 9. お皿にダッテリーニのゴールデンイエローソースを敷き、リングイネを巣のようにのせて、バジルの葉かざりとオリーブオイルをかける。 Spada alla Matalota カジキマグロのマタロータ “マタロータ"とはシチリアをノルマン人が統治していたころの名残の、シチリア漁師の間に伝わる料理。フランス語でmatelotとは船乗りの意。どの文化でも漁師の料理とくれば、簡単なレシピですが、重要になるのは素材の良さ。 材料 2人分: カジキマグロ 2切(250 g ) 塩 唐辛子(好みで) にんにく一片 良質のオリーブオイル(できればトンダイブレアのオリーブオイル=ザハラ ) シチリア産カラフルトマト(ダッテリーニ) ゴールデンイエロー 茹でたじゃがいも 100g ( サイコロに切っておく) ローズマリー 1枝 塩漬けケッパー 適宜 白ワイン 1/2カップ 沸騰したお湯 おたま1杯分 バジルの葉 作り方: 1. フライパンにオリーブオイルを敷き、にんにく1片(切らずにそのまま)と好みで唐辛子を入れて香りをだす。 2. 1.にゴールデンイエローのトマトソースを加える。ローリエ、バジリコ5枚を加え、4〜5分温めて置いておく。 3.蓋つきのフライパンに、大さじ2のオリーブオイルを入れ、にんにく1片とローズマリーを1枝入れ中火に。 4.パチパチと音がして良い香りがしてきたら、カジキマグロを入れ、1分ほど焼いてから取り出す。 5.そこに白ワインを加え、茹でたじゃがいも、2のトマトソース、塩漬けケッパー、沸騰したお湯を加えて蓋をし、4分ほど煮詰める。 6.お皿にカジキマグロを載せて、5のソースをたっぷりかけ、バジルの葉を飾り、オリーブオイルを回しかける。 |
Casa Morimi
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