今年の2月にパンテレリア島を訪れたのは、忘れがたいレモンマーマレードの生産現場を訪れるため。生産者エマヌエラさんを初めて訪ねたのは、少し遡って昨年6月。輸入をはじめたばかりだったケッパーの畑を見せてもらい、オレガノを乾燥させるところに立ち会い、野生のフェンネルシード の香り高さを確かめに島を訪ねました。 その出張の折に、彼らの別の品々もいろいろと味見させていただき、味わった中でうわっと感動したのが、島の琥珀色のぶどう“ジビッボ”のジャム(砂糖を足さないので、日本ではジャムの枠にはいらずにスプレッドという名になりました)と、ジビッボのモスト漬、そしてレモンマーマレードの3品でした。 以前シチリアで忘れがたいオレンジマーマレードに出会ったことがありましたが、その生産者に翌年の収穫でできた新しいサンプルを送ってもらったところ、まったく違う味、まったく違う食感、まったく違う品物になっていた、、、という苦い経験をしたことがあります。 そのため小さな生産者が作る手作りの柑橘系のマーマレード(あるいはジャム)で、ペクチン不使用となると、用心に用心を重ねて選ばねばなりません。蜜のように美味しいジビッボぶどう100% であれば、どうやっても美味しいでしょうが、レモンは以前の経験からも、どうしても慎重にならざるを得ませんでした。そのため、ジビッボの素晴らしい2品だけ先にご紹介しました。 レモン収穫が巡ってきて、レモンマーマレード作りに立ちあった今年2月。その美味しさの秘密は想像を超えた手間と愛情だといういことを実感しました。この様子は、NHKの番組に取材していただいたので、ご覧くださった方もいらっしゃると思います。 今日のブログでは、レモンマーマレードについて書いてみようと思います。 パンテレリア島のレモンは、ルナーレ(月の意)という品種のレモン。生産者のエマヌエラさんとカルメロさん。 パンテレリア島 のレモンマーマレード 美味しさの秘密おいしさの秘密 その1: 火山の島パンテレリア の土壌 パンテレリア島は、シチリア島から飛行機でさらに南西に45分程、シチリアとアフリカの間に位置する、人口約8,000人程の小さな島。火山が噴火してできた島であり、ゴツゴツとした岩が大地を覆い、黒い大地が広がっています。この土壌が火山質のミネラルを豊富に含み、特別な養分が島の作物を特別な風味に仕上げているのです。シチリア産のものとさえ一線を画す、力強い素材力=パンテレリア品質はこの火山島の肥沃な土地によるものなのです。乾燥した土壌も、レモンを風味豊かにするそうです。 おいしさの秘密 その2: 自然と人の智慧の融合・アラブの庭 パンテレリア 島は強風の島。一年のうち300日ほどが強風に見舞われると言われています。果樹は、Jardino Arabo ジャルディーノ・アラボ "アラブの庭"と言われる 、岩を積み上げて壁を囲った小さな庭で育てられます。パンテレリア の人々は、何世紀も昔からこのアラブの庭の中に、大切にレモンの樹やオレンジの樹をゆったりと育て、まるで人格を持った人間のように大切に扱っているのです。名前もつけたりしていたこともあるそうです。なんだかとても素敵です。 アラブの庭の背の高い岩壁は、強風からレモンを守り、強い日光でレモンの樹が焼かれることを防ぎます。庭の中の温度と湿度を壁の外側の厳しい自然環境よりもおだやかに保ち、レモンの樹の健やかな成育を助けるのです。大自然に人の手と智慧を入れることで、おいしいレモンの実をみのらせるのです。 おいしさの秘密 その3: 酸味が少なく、皮まで美味しい“ルナーレ種のレモン” ボノモ さんの育てるレモンは樹齢100年のものも。パンテレリア 島のルナーレ(月の)という品種のレモンは、その名の通り、冬の間は毎月のようにたわわに実にをつけます。皮の部分、白いワタの部分、すべて美味しく食べられてしまうレモンです。火山の島・パンテレリアだからこそこうしたレモンが育つそうです。 おいしさの秘密 その4: 自分の庭のレモンだけ。熟し加減をみて収穫、その後すぐに加工。 ボノモ さんのレモンの樹は10本。冬の間その10本が毎月のように豊かに実りをもたらします。ボノモ さんは近くにあるレモンの樹々の様子を常に見守り、適切に熟したときを見極めて収穫、そしてできるだけ早く加工します。朝収穫してその後すぐに加工するか、あるいは前日の午後収穫して皮を丁寧に剥き、冷蔵庫に保存しておくかのどちらか。樹から実を外しマーマレードに加工するまで、ほぼ12時間以内。収穫から加工まで時間が短ければ短いだけ、自然の恵みそのままの美味しいマーマレードに。当たり前に自分たちのレモンしか使わない、そして酸度が同じになるよう同一のレモンの樹の実しか使わない、彼らの姿勢を尊敬し、またそのことに感謝しています。 おいしさの秘密 その5: 農薬、肥料ともに不使用のレモンを使って 農薬も肥料も不使用。自然の力だけで育ったレモンが原材料です。なお有機JAS認証の取得は小さな生産者であるボノモ さんに費用的にも事務作業的にも大きな負担になるため、あえて手続きをお願いしていません。 おいしさの秘密 その6: 家族に伝わるマンマのレシピ。手間と愛情をたっぷりと。 ほぼ手作りのボノモ さんのレモンマーマレード。レモンの皮をポテトピーラーでひとつずつ丁寧に剥き、痛んだところは丁寧に除去します。皮は皮で10分ほど水で煮ます。柔かい実の部分は5分ほど煮て余分な苦味をとり、その後この実をナイフで切って種をひとつひとつ取り除きます。手間がかかりますが、愛情こもった工程を経てなめらかな味わいが実現。機械に頼るのは皮と実を別々に茹で(茹で時間が違うため)て一緒にし、フードプロセッサーで細かくする工程ぐらい。 お砂糖もレモン100gに対し30gと甘さ控えめで、素材のレモンが持つ甘みを活かしています。 フードプロセッサーにかけたあとも、ボノモ さんは残っていた種を丁寧にひとつひとつ取り除きます。種が入っていても味は変わらないけれど、食感が少しでもよくなるように、と。本当に気が遠くなるほどの丁寧な手作業を重ねて、秀逸なレモンマーマレードが出来上がることを実感しました。その手間は、私の想像をはるかに超えていました、、。ボノモ さんのお母さんは、いつもこの方法で家族のために作っていたそうです。まさに愛情と手間をたっぷりかけた、マンマの味なのです。 ここをクリックすると、編集できます。 パンテレリア 島のレモンマーマレードの召し上がり方「世界は欲しいものにあふれている」の番組中に、レモンマーマレードを味わってくださったJUJUさんがドレッシングに入れても美味しそう!とコメントしてくださいました。なるほど!すごい発想力。JUJUさんはお料理上手に違いない!同じ番組の中では料理研究家のフランチェスコさんが、鶏のささみに合わせてくださいました。 番組にも登場してくれたシチリアの洗練された魚料理のレストラン「Il Consiglio di Sicilia」友人のシェフ・アントニオは、レモンマーマレードにレモン汁と塩を少し加えてソースにし、オリーブオイルで和えたカンパチのお刺身に合わせ出してくれました。美味しかったなぁ。 ボノモ さんたちはレモンマーマレードをチーズと合わせることが多いそうです。またレモンマーマレードを使った焼き菓子も作ってくださいました。月並みではありますがバタートーストに、ヨーグルトにやっぱり最高です。 7月二回に分けて入荷予定です。ぜひみなさまに味わっていただけたら嬉しいです!
1 コメント
ゆみこ
26/6/2020 00:29:04
ボノモさんのレモンマーマレードはお母様から受け継がれたレシピだとTVで紹介されていました。こんなにも丁寧に作られた逸品、ぜひぜひご賞味ささていただきたいと楽しみにいたしております。
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