足を運んでみないと、わからないことは山のようにある。 今回深くそれを実感したのが、パネットーネ菌と日本で呼ばれている、天然酵母。 パネットーネを食べられなかった私がやっと巡り合った、 二人のヴェネトの職人たちの菓子工房BAGHI'Sバギーズ。 師匠から受け継いで、100年以上生きている天然酵母を使っています、と 聞いたときに、わぁすごいな、と漠然と思ったものの、実際見てみると いかに自分の想像力が乏しかったかを目の当たりにすることに。 毎日パネットーネ作りのために、お砂糖を少し溶いたBagnoバーニョ(=お風呂) というお湯入にれながら3回も発酵させてやっとパネットーネ作りが始まることなど 想像だにしていなかった。 1回の発酵に3時間もかかること、だから毎日なんと9時間!もかけること! 今はほとんど合理化されており、これだけ手間のかかるパネットーネ作りを している工房はごくわずか。 昔ながらのパネットーネ作り、知ってみると驚くことが山のように まず天然酵母が発酵したら、硬い皮をとって、天然酵母のCuoreクオーレ(心臓)と 言われる柔らかい部分と、小麦粉(これは通常の00)を加えてこねるこねるこねる。 これは機械がやってくれます。 表面がつるっとしてきたら、機械から取り出して、1つの塊に。 そうしたら今度は、大きなパスタマシーンのような機械に、 その塊を入れて伸ばし、入れて伸ばしを手作業で繰り返します。 その工程は、まるで手打ちパスタ! 手打ちパスタと違うのは、ここで終わりでなく、綺麗に折りたたんでまたバーニョに入れ、 ここからまた発酵が始まり、同じことをさらに後2回繰り返し、 3回目の発酵した酵母の半分を翌日の天然酵母としてとっておき、その半分を使って やっとパネットーネ生地作りが始まること。 実際にパネットーネを探し始めて、いかに保存料を使わないものが少ないか(ほとんどない)。 その中でも、いかにビール酵母を加えていないものがが少ないか(ほとんどない)。 ビール酵母を混ぜると確実に発酵するそうですが、 天然酵母のみだけで発酵させると、とうまくいかないこともあり、 とてもリスクが高い。天然酵母には、粉末状の酵母から作るものもあるけれども、 彼らのように生き続けている天然酵母を使うと、上記のように膨大な手間も時間もかかり、 そして小麦粉も大量に必要になるので、原料費も随分かかる。 シーズンに入るとクリスマスが終わるまでは、1日も休みを取らないという彼ら。 朝早くから夜まで、ひたすらパネットーネ作り。その仕事ぶりを見てみると、 「美味しいけど、どうしてこんなに高いの〜」という気持ちが、 「こんなに手間をかけて、これだけの材料を使って、この価格でも本当に割に合うのかしら、、、」 という気持ちに変わってくる。 現場に行ってみないとわからなかったこと、その2。卵。 お菓子屋さんの工房で、この時代、わざわざ卵を割るところなんて、ほとんどない、という事実。 パックに黄味だけ入って低温殺菌したものを使えば、パックを開けて、流し込めば終わり。 それに対し、バギーズは1日1500個の卵を、1日1時間半もかけてひたすら割り続ける。 「まるで禅の瞑想のようね」と言うと笑っていた。“キチガイ”とよく言われるんだ、と聞いたが これではそりゃ当然だ。近所で最高の卵を作る人がいて、その養鶏場からやってくる産みたて卵を、 1個ずつ手割り。しかもその白身も使い切れずに捨てることになるので、 結局コストも高くなってしまう。それでも、彼らには“自分たちが食べたいものを作りたい”と ゆるぎない信念があるから、一番おいしい、新鮮な卵で作り続ける。 卵黄だけが入った紙パックに変える気など、サラサラない。 この卵の生産者のところに連れていってもらった。鶏がリラックスできるよう、 音楽を24時間かけているわ(ちなみにテクノはNGだが、それ以外はロックでもOK) 有機オリーブ畑でよくみかける、トラッポラ(媚薬になる自然成分を水に溶いて、 ボトルに引き寄せハエを駆除する)でハエから鶏を守ってあげてるわ、 餌も横の畑の遺伝子組み換えでないとうもろこしを70%使い、あとは大豆を使っていて、 鶏のためにできる最高の環境と食生活をも考えている。 1万羽もいる養鶏場なのにほとんど匂いがなくて、驚いてしまった。 (実は私が、鳥恐怖症なのであります、特に鶏。でも清潔なおかげか いつもより怖く感じなかったです) 夏は暑いので餌をあまりたべないので、黄身の色は薄くなり、 よってパネットーネも少し落ち着いた色。 一方寒くなると鶏が餌をよく食べるようになり、黄身は濃くなる。 彼らのパネットーネはサフランを使っているの?とよく聞かれるそう。 自然がもたらず、黄金色なのです。 オレンジのシロップ漬も1ヶ月もかけて作ったものを、出来上がったら、 二日間ひたすら手で切る。そうしてできたオレンジのシロップ漬の味わいは、 たしかにまったく美味しさが違う。これだけでも幸せな味。 粉は、というとイタリア産の小麦粉も胚芽と一緒に石挽きした、 セミインテグラーレ(玄米5分つきのようなもの)。 栄養豊かなこの粉は、通常よりも重い粉でもあるわけなので、より一層パネットーネ作りの 技術がないとできない。 焼きあがったら、下にむけて10時間。そこでやっとパッキングできるというわけ。 焼き加減も、生焼けだと4ヵ月もたないし、火が入るすぎるとパサパサに。 これも毎回違う焼き加減を管理するわけなので、本当に大変。 このしっかりした天然酵母をしっかり準備するおかげで、4ヶ月保存料なしで 持つわけなのです。 パネットーネ嫌いだった私ですが、 このパネットーネは止まりません、、、。 このパネットーネはあまりに原料と時間がかかっており、どうしてもお高く でも最高に美味しいので、私たちの利益分を下げても みなさまへ喜んでいただきたい一心でご紹介することにしました。 それでも関税や空輸でとてもお高い品ですが、、。 どうぞ、ぜひお試しください! https://www.lacucinetta.com/SHOP/BA-0001.html
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