*写真はil corriere della seraより イタリアの全国紙il corriere di seraに、建築家レンツォ・ピアノが
どう日々を家で過ごしているかのインタビュー記事が載っており、 ミラノの大切な友人・椎名香織さん(デザイナー、Hands On Design代表)が 日本語にしてくださいました。 レンツォ・ピアノは銀座のエルメスビルや関西空港の設計者として知られています。 パリ在住、ジェノヴァ出身のイタリアを代表する建築家です。 以前読んで心に遺っている言葉、建築家は自らが創った空間において 人々がどう行動するかに責任を負う、も彼のものだったような? 以下、香織さんのご好意で、Stay Homeのヒントになればと 香織さんの言葉とインタビュー記事の訳をご紹介します。 <香織さんの言葉> ロックダウン4週間目のミラノで、パリでロックダウン生活を している建築家レンツォ・ピアノのインタビューをコリエーレ・デッラ・セーラの記事で読みました。 4週間もの間、原則として家から出ずに生活するって、誰もが想像さえしたことないと思う。 それも、あれよあれよという間に、10日くらいでなされた決断です。 それがどんな毎日か。 うまく言葉にできないけど、それは本当に特別な時間です。 思ったよりずっと否定的でなく、思ったよりずっと意味ある時間。 考える事以外、何もできない不思議な時間。 そんな今の時間を、レンツォ・ピアノはとても上手に表現してくれているので、 一部を日本語に訳してみました。 レンツォ・ピアノは大好きな建築家です。 そして、一人の人間としても尊敬しています。 題名は忘れてしまったけど、ずっと前に読んだ彼の「現場日記」、 とても素晴らしい本だったの思い出しました。 もし、興味があったら読んでみてください。 私の拙い訳で申し訳ないのですが。(色々考えたのですが、「僕」で訳しました) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 一日中何をしているんですか? みんなと同じように家にいます。唯一僕にできること、仕事、をしてます。 仕事をしていない時は? 考え事。そして、考える事は苦しみでもあります。 僕は明らかに特権階級です。 パリの広場に美しい家を持っています。家を持っていない人のことを考えると心が痛みます。 そして、自分の建築物が今、全て空っぽだと思うと苦しくなります。 僕はこれまでの人生で、人と人が出会い、価値観を共有できる公共の建物を作ってきました。 図書館、講堂、博物館、のように高い価値観を共有できる場所をです。 そんなすべてが、今はほとんど空っぽです。 ホイットニーはニューヨークで最初に閉館した美術館でした。 オープンしている建物は? パリの裁判所、大阪空港。 ウガンダのEmergency(訳注 N G O)の病院はほぼ終了していましたが、 ギリシャの他の3つの病院は建設中です。すべて太陽光発電、ゼロエミッションです。 あとはボローニャの小児病院。これらの現場が最初に再開するでしょう。 本は読めますか? 普段より少ないですね。普通は、1日に30、40ページを読んでいましたが、 今はほとんどが再読です。 今は、過去を振り返る時なのかな。 何回目かわからないけど、「白鯨」を読み返しました。 僕の友人フェルナンダ・ピヴァーノの翻訳本です。 友達とは連絡を取り合っていますか? はい。昨日ジーノ・ストラーダ(訳注 上記のN G Oの代表)と話して、 今日カルロ・ペトリーニ(訳注 スローフードの創設者)と 4月25日に予定している大規模なバーチャル・パーティーの件で話をしました。 リリアナ・セグレ(訳注 イタリアの終身上院議員で、 アウシュヴィッツの体験談を話す活動を続けている) そして、お隣さんの偉大なるブラジル人写真家セバスティアン・サルガドと 奥さんのレリアと息子のロドリゴとも話しました。 あなたのお子さん達とは? 中庭を挟んで20歳のジョルジョが住んでいます。 毎朝、手を振ってイタリアンスタイルで挨拶をしています。夜はチェスをします。 窓から? パソコンで。 海戦のように、D4で塔、D9で馬。 いつも息子が勝つけど。ゲームは2時間も続きます。 でも空白の時間が多いからね。物を考えたり、議論を交わす時間もあります。 他には何をしていますか? 木を見ます。 4月の初めには、広場の木々に葉が育ち始め、 中央の馬術碑の隣にある木々はすでに葉が一杯、他の木々はちょっと遅れてる。 それは僕の心を満たす光景です。葉は自然に育ち、季節はやってきます。 それは治癒のメタファーです。 芝生もきれいだし、空気もきれいだし、空もいつもより澄んでいる。 街は静かで、数羽の珍しい鳥の声が聞こえてくる。 でも現実では、歴史の中で劇的な瞬間を生きていることに変わりはありません。 毎晩8時、静けさを破って聞こえてくる、医師と看護師への拍手が現実を思い出させます。 あなたも拍手していますか? もちろん、フランスではみんなしてます。 それは人がするからではなく、感謝の気持ちです。彼らには本当に感謝しなければなりません。 気取っている場合ではないんです。感情を解放しなきゃいけない。 あなたの今の感情とは? 世界のあちらこちらで苦しんでいる生き物がたくさんいるような気がします。 ポンピドゥセンターはここから1キロの場所にあり、心にかけています。 でも、空っぽです。 私は、社会として、思想として、文明の場としての都市を愛しています。 広場、道、橋、そんな数々を愛しているけど、みんな空っぽです。 それは不条理で、うまく言葉にすることさえできない。 空虚、そういえばいいのかな? 様々な都市のアイデア、都市を建設し、 共存の素晴らしさを表現する空間を作り、自分の経験を生かし、 多様性を価値に変える、そんな僕にとって、今の状況は深い悲しみです。 以前の生活の中の何が一番たりませんか? 正直に言っていいかな。 スマートワーキングすることは、将来への実験になる? そんなこと、バカらしい。 色々な場所に行かなければ、現実からインスピレーションを得なければ、 どうやって仕事する?創造する? 僕は、現実とのコンタクトがとても懐かしい。 物や人とのコンタクトを妨げるこの病気は悪魔だよ。 僕の仕事は、何十個もののボールを使ったキャッチボールでから生まれるんです。 エンジニア、建設業者、工場長、労働者など、ある人が何かを言うと、 別の人がそれをキャッチして、それを送り返し、また別の意味を加えて戻ってくる。 そんなふうにアイデアが生まれてくる。 創造性は常に他人との関わりから生まれ、そしてその後に、一人でテーブルに座り、 デザインし、物を書き、考えることができるんだ。 考える時間はたくさんありますね。 確かに、でも僕は道で、現場で、カフェで、そして歩道を歩きながら考えるんだけど、 今はそれができない。壁に積み上げていく大きなモザイクが僕たちの人生で、 毎日一片を一つ足していくとしたら、今は、そこから離れ、距離をとり、 全体の大きさを眺める時なんだ。 ラヴェンナのモザイク画家たちはこのような作業をしていた。 何が良くて、何が間違っているかを確かめるために、時々モザイクから距離をとる。 知識人のやり方っていうわけじゃない。僕はインテリではないから。 土曜日に段に座って、自分が耕した畑を見ている農民も同じだ。 これが終わったら何がしたいですか? 若者に対して、さらに時間と力を注ぎたい。 もうすぐ、パドヴァ、モデナ、パレルモの3つの公共空間のための3つのプロジェクトに 関わる12人の建築家、上議員議員の若者達とコンタクトを取る予定です。 もうずいぶん前、僕が60歳になった時、妻と二人で日本旅行に行き、伊勢のお寺にお参りしました。 なぜ伊勢神宮が特別なのか知っていますか?" 想像もつきません。 20年ごとに壊され、再建されるのです。 東洋では永遠は静止ではなく連動なのです。 若い人たちは二十歳の時にお寺に来て、その様子を見て、四十歳になったら再建して、 二十歳の人たちを指導します。 それは人生の素晴らしい例えで、最初に学び、次に行い、次に教えます。 地球を救うのは若者たちだから。 若者たちは、私たちが決して見ることのない未来に送るメッセージです。 僕たちがもういない未来を垣間見るためには、 彼らが僕たちの肩に登るのではなく、僕たちが彼らの肩に登る必要があるのです。 最近は本当に外出してないのですか?買い物にも? 本当に出てません。20年来一緒にいるヘルパーが外の用事をすましてくれています。 妻のミリーは、門番になったかのようで、僕を外出させてくれません。 でも、何も困ったことはないですよ。 そして、僕は、同情ということではなく、僕のような特権を持たない人のことを常に考えています。 奥様ともソーシャルディスタンスをとっていますか?それともキスやハグ? いや、僕と妻はしょっちゅう抱きしめ合い、キスしてます。 それはそうでしょう。3週間も一緒に監禁されていて、 同じ運命を抱えているのだから。 でもポジティブに考えることしかできません 今は医師の時、そして、建築家の時が戻ってくる。 そして、僕は人生の最後の瞬間まで仕事を続けます。
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8月もあと1日残すばかりとなった今日、久しぶりに近所の市場に。 まだ100%とは言えない出店状況であるし、ほとんどの八百屋さん明らかにいつもより控えめな物量。 それでも暑すぎてしばらく見かけることのなかった花屋さん、魚屋さんが久しぶりに姿を見せていて 嬉しくなった。 <今日の市場から> イタリア人の友人が以前言っていた言葉が忘れられない。
「私は引っ越しできない。だって私の肉屋、私の魚屋、私のパン屋、私のクリーニング屋から離れられないから。」 その言葉を聞いたとき、へぇ〜っと思ったけれど、今はその気持ちが少しはわかるようになってきた。 土曜日に有機野菜を近郊から売りに来る農家の人たち。彼らと少しずつ顔なじみになると、同じ野菜やフルーツを買うのならば、大手スーパーや大型店よりも、信頼できて頑張っている彼らから買いたいと思う。土曜日に用事があって買いに行けなかったりすると、地元産の旬の良い野菜が手に入らずに残念であるだけでなく、なんだか申し訳ない気さえしてくる。とても誠実な価格で販売していて、毎回気前よくおまけをしてくれたりするので、少しでも応援したいし、朝パンパンできたトラックを空にして帰ってくれるといいな、と心配になる。 お客さんが他にいなくて落ち着いているとき「僕たちコーヒーの配達頼むけど、一緒にどう?」なんて声をかけてもらったことがあった。常連客が買い物を終わったあとに、彼らが仕事している横に陣取り、そのままずっとしゃべっている様子を見かけるのもしばしば。イタリアのこういう人間ぽいところが、とても好きだ。大手スーパーで棚から自分で必要な分をとって、量って買うのも便利ではあるけれど、また世界中から届く野菜とフルーツがなんでも揃うぐらいある売場はすごいことだと思けれど、プロが、そして育てた本人が、「いつ食べるの?今日だったら、これが食べごろだね。いっしょにこれと食べたらおいしいと思うよ、一個つけとくね」なんて調子で自分のために選んでくれるのは、とてつもなく贅沢で幸せなことだと思う。 不揃いの野菜やフルーツが木箱ひとつひとつにいっぱいに詰まって、その木箱が所狭しと並んでいる。都市で暮らしていると、彼らの品揃えからその季節の自然の様子が透けてみえてくる。最近、自然がそのときに与えてくれる季節の野菜や果物だけで十分なのでは?と思うことがある。またそれがきっと自然のリズムの理にかなっているだろうし。そして旬はやっぱり美味しいし。 それにしても一人暮らしの身は、買い物も量が少なく売上にあまり貢献できない。ごめんなさいー。 何も動かないイタリアの8月もあと数えるばかりとなり、
ミラノには人が少しずつ戻りつつあります。 暑さもひと段落し、心地よい秋らしい風(Vento Settembrino 9月っぽい風。)が吹いて、 いよいよ夏も終わり。そして、心はもうすっかり秋。 今週の月曜日からすべての生産者が休暇から戻ってきて、 メールと電話で「夏はどうだった?」の挨拶から始まり、 秋に向けて本格的に仕事が再開しました。 やっぱり一緒に働く仲間の声を聞けるのは、嬉しいものです。 そしてオリーブや葡萄をはじめとする生産物がどうなっているかを聞いて 胸をなでおろしたり、ハラハラしたり。 この秋は日本のさまざまな場所で試食会やイベントを させていただくことになっているので、今からちょっと緊張しています。 今年は初パネットーネも。やっと納得するパネットーネに出会えたので、 搾りたてオリーブオイルと一緒に初めて輸入する運びとなりました。 素材ひとつひとつにこだわりがあり、たっぷりと手間と愛情と時間をかけた、 素晴らしいパネットーネです。 パネットーネを長い間どうしても美味しいと思えず、また高い関税!のため、 クオリティに対し価格が合わないのでは?と懸念もあり、今まで紹介まで至りませんでした。 そうした考えが見事に覆った今回のパネットーネ、多くの方に楽しんでいただけたら嬉しいです。 パネットーネの予約締め切りは9月末。数が決まったら、10月中、ひたすら工房をフル回転し (といっても工房は二人だけですが)搾りたてオリーブオイルとともに11月中に日本へ出発! の予定です。予約は、9月10日ほどから。詳細もそのころ見ていただけるように準備中です。 はじめてのことは、やっぱり緊張します、、、。 週末の朝、友人から電話が。「Dove sei? Un caffe' ? 今どこ?コーヒーでもどう?」ということで5分後に合流。今度はお昼過ぎに「ランチに来ない?」と別の電話があって、ランチにお呼ばれすることに。到着してみると、テラスにテーブルの準備がしてあって、あぁテラスの季節が始まったんだなぁ、と嬉しくなりました。 東京暮らしでは、近くに住んでいる友達ともなかなかこうはならなかったのですが、ミラノは東京に比べて街が物理的にコンパクトなこと、また一般的に皆が東京ほど忙しくないこと、ご馳走がなくとも気軽に自宅に呼び合う風土があるから、こんな突然、が多いのでしょうか。一人暮らしには、こうしたお誘いはありがたいことですが。 さてテラスの食卓。到着してみると、今からブレサオラ(ロンバルディア名物牛の薫製肉の薄切り)をお皿に並べ、フィノッキオ(ウイキョウ)をピンツィモニオ用にくし切りにしてグラスに縦に入れ、ピッツァ生地に生のグリーンピースとクレシェンツァのチーズを載せているところ。ランチにはまだ少し時間がかかりそう。座っておしゃべりしたり、一緒にお手伝いしながらゆっくり待準備。 このピッツァはトスカーナの海沿いのリゾート地・フォルテデマルミの有名ピッツェリア店のスペシャリティなのだとか。それに挑戦ということだったのですが、本人的にはイメージとかなり違った出来だったらしい、、。それでも十分美味しい、というのが我々ゲストの感想でしたが。 食事そのものよりも、一緒に過ごすことが大切、と皆が思っているから、気軽に「来ない?」の声をかけられるのかも。テラスの季節になって、食事より気軽なアペリティーボ(ワインと簡単なおつまみ)の機会も増えて、テラスにお邪魔する週末が増えそうです。
ミラノが一番華やぐ季節、ミラノ・サローネが先日の日曜日で終了しました。 ものすごい人!と思っていたら、昨年の20%超えでミラノに人が増えているとか!? ミラノにはなかなか来てくれる人がいないのですが、この時期だけは来客がどーんと増えます。 昨年は、無印良品の『佇まい展』で、木工作家の三谷龍二さん・順子さん夫妻が我が家に 滞在してくださり、隣の友人の家には、陶芸家の安藤雅信さんと服飾作家の安藤明子さん夫妻。 他にガラス作家の辻和美さん、陶芸作家の岩田圭介さん、オブジェ作家の岩田美智子さんと 豪華な顔ぶれと、毎晩のように集う楽しい時間を過ごしました。 昨年のサローネ最後の夜、我が家での打ち上げのときの一枚。今見ても懐かしい、、。 楽しかったなぁ〜。 今年は、パリから敬愛するお姉様が、我が家に急遽滞在。カーサ・ブルータスの記者である彼女は 2泊滞在している間も、猛烈に仕事し、そして瞬く間にパリに戻っていきました。 それでも食のジャーナリストでもある彼女と、何回かの食卓を一緒に囲めてよく笑い、サローネでの素敵なインタビューの内容を聞けたりと、とても楽しいひとときでした。美味しいものに執念がある人と囲む食卓は、とてもたのしい。 サローネの期間中、まずミナペルホネンの皆川明さんのオープニングへおでかけ。 日頃から、青山のCallにて私たちの食品を販売してくださっている御礼を直接お伝えできました。 一緒に写真を撮らせていただいたのに、帰ってきたら、なんと何も映っていなかったという衝撃(笑)。 会場はすごい人で、ミラノでのMINA人気を大実感しました。大盛況の様子に、 ミナペルホネンの一ファンとして、また日本人として、とても嬉しい夜でした。 サローネとはいえ自分の仕事もあり、また長い出張の後の疲れもあり、近所で開催されていた エルメスを見て、大切な友人・椎名香織さんとリッカルドさんが率いるHANDS ON DESIGNの オープニングにお邪魔した後は、最終日の日曜日の夕方まで、家からほとんど出ず。 『世界中から人が来ているのに、いいのか自分、、』という心の声はありましたが、夜だけは 東京から来ている気の合う仲間とゆっくり食事ができたし、疲れてしまっている以上、身体の声、 心の声に忠実に。好奇心に身体がついていかないから、いた仕方ない。(とほほ) 日曜日の夕方、友人デザイナーの水ともこさんのプロジェクトを拝見しに。トリエンナーレ美術館で 開催されていた『GRAND SEIKO』の『FLOW OF TIME (良かった!)』を訪ね、最後に やっぱり香織さんのHANDS ON DESIGNの新コレクションをもう一度拝見、おつかれさまを 伝えに行き、今年のサローネ終了。かなり限定的ですが、それでもとても刺激的な数日間でした。 普段は地味なミラノ。サローネがあるおかげで、いろんな場所から来客もあり、街も盛り上がり、 本当に嬉しいこと。それにしても恐ろしいのが、ホテルの価格。 知人が泊まったホテルのシングルは、一泊一室14万円!アメリカの有名ホテルではありますが、 ごく普通の部屋だそう。目が点、、、。ホテルの値段だけは、これ以上エスカレートしませんように。。 左下は、HANDS ON DESIGNにてデザイナー椎名香織さんと、アシスタントのカルロ君。 中央下は、ブレラ美術学校の寮だったという建物の中庭でのHANDS ON DESIGNオープニングの様子。 右下は、GRAND SEIKOの一幕。 左下はミナペルホネン会場の近くで。中央下はトリエンナーレ美術館。右下は、エルメス会場にて。
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