パネットーネ工房での修行、2日目です。 修行と言っても、作る方でなく理解する方ですが。 朝工房に入ったら、昨晩の生地がおいしそうにたっぷり 発酵していました!プルプルです。 ボックス3つ分をインパスティトリーチェ(攪拌器)の中へ。 まず1分ほど回して、馴染ませます。 セミインテグラーレ(玄米でいうと5分つき)の粉を足して、 1時間ほど攪拌させていきます。 その間、次の材料の準備を。朝の儀式とも言える、たまご割り。 ただし、2日目(2回目に足す)黄身は、初日の1/3ほど。20kg=100個ほど。 全部で420個ほどの黄身を使うことに。 500gのパネットーネで例えると、ほぼ3個を使っていることになります。 だいたい1時間ぐらい経つと生地の表面が滑らかになり、 最後の黄身を投入。次の材料の準備に入ります。 手に入る一番良いバニラビーンズを選んでいるというファビオ。 直前に鞘から外して、たっぷり砂糖と混ぜ、生地に混ぜていきます。 オレンジのシロップ漬けは、自家製。シチリアの有機農家からの取り寄せた オレンジの皮をまず蒸して、砂糖1:水1でシロップを作り、 50度の温度設定したコンテナーの中に1ヶ月入れてつくります。 これを全部手で切っています。美味しさが違うそうです、、、。 1月にこの作業をします。瓶に入れたらグルコースをシロップに加えます。 グルコースを加えないと砂糖が結晶化してしまって欲しい状態にならないそうです。 ただしグルコースはオレンジピールの中には入っていきません。 オレンジの皮から水分がでて砂糖だけが入っているので、 瓶で保存する時点では、もうオレンジの皮に入る余地がないのです。 そして昨晩工房を出る前に、余分なシロップを切るよう瓶の蓋を開けて 逆さまにしますが、その際にシロップに含まれたグルコースもでていきます。 しかしながら一括表示にはグルコースも原材料に記載しています。 レーズンはオーストラリア産のシックスクラウン最高ランクのものを。 美しい琥珀色です。亜硫酸塩(酸化防止材)が入っていることが多いレーズンですが、 その代わりにひまわり油がコーティングされいます。 こちらも昨晩お湯で綺麗に洗い流いし、朝味わったら、ふっくら、しっとり。 パネットーネ生地が仕上がる最後の最後、攪拌器を回してから2時間経とうとしている頃に、 レーズンとオレンジのシロップ漬けを加えて均一に混ぜます。 さぁ重さを測って成形し、型に入れていきます。 私に見せてくれるだけのために、3つ750gのパネットーネ(イタリアでの標準サイズ)
を準備してくれたファビオ。型に入れたら明日の朝までほぼ24時間、14度の ストレージに入れて、低温でゆっくり発酵させます。 こうすることで、天然酵母が時間をかけて粉の繊維を断ち切り、 食べた際の消化を良くします。 さぁ、3日目の明日はやっとオーブンへ! やっぱり出張を急遽延ばした甲斐がありました。
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今年もいよいよパネットーネの季節です! BAGHI'S バーギズのパネットーネ工房にやってきました。 今年3年目ですが、製造工程が80時間前後と長く、いまだ まだすべての工程を見きれていないので、今年こそ! 工房についた途端に香りのよいバターの香りにクラクラ。 早速試食したパネットーネがしっとりと風味よく、 自家製のオレンジの砂糖漬けもまた美味しすぎて、 ランチ替わりにペロリ。 これでミラノに帰っても悔いがないぐらいの美味しさ、、、。 私がミラノから半日かけて到着したときには、すでに 100年以上生き続けている天然酵母が9時間の発酵(3時間x3回)を 終えていて、パネットーネ職人のファビオは生地作りに入るところでした。 写真左上が発酵した様子、右上がその天然酵母を切りとった様子。 天然酵母は9時間以上発酵させないように工夫しているそうです。 なぜならば発酵しすぎると酸が強くなり、 また本来の強さがなくなるとのこと。面白い、、。 さぁいよいよ生地作り!水を入れて、天然酵母を入れたら、 卵を入れて、インパスティトリーチェ(捏ねる機械)にかけ、 その後、お砂糖と粉をいれます。 バーギズの凄さはまず原材料の豊かさ。 卵は近所で産みたての卵を。写真で320個分です。 サフランを入れているのか?と聞かれることもあるほどの 鮮やかな色は、この黄身の色なのです。 この卵の凄さは、鶏たちが気持ちよく過ごせるように 音楽をかけたり(ただしテクノはNG)、清掃も頻繁にして 私が訪問した時も信じられないことに全く匂いがしなかったことからも 品質を想像していただけるかと。 鳥インフルエンザ以降、屋外で飼うことが禁止されましたが おおきな屋根の下、鶏たちにとってできる限りの幸せを考えている パオロさん。冬は鶏たちがよく食べるので、黄色味が濃く、 夏は暑くて食べないので、色が薄いそうです。 今年はさらに品質がバージョンアップ!今まではベルギーのプレミアムと いわれる高品質のバターを使っていましたが、オランダの 小さな生産者のバターに今年は変更になりました。 その決めては香り!そして生クリーム分がさらに多いそうです。 今日一番の衝撃はベルギーの澄ましバター。バターと言っても、 澄ましバターまで使っているなんで、想像もしておらず絶句。 相当高いでしょう?と聞くと、通常のバターに2倍以上とのこと! こんなことしている人、他にいるの?と聞いたら、 ほかには誰も知らない、と。そりゃそうでしょう、、、。 相変わらず常軌を逸しています、、、。だから心底敬愛しているのですが。 粉も彼らならではのこだわりが。イタリア産であることはもちろん、 石臼で挽いたセミインテグラーレ。 つまりお米でいえば、5分付き玄米のようなもの。 胚芽の栄養と風味が豊かだからチョイス。 セミインテグラーレはその分、胚芽を含み重い粉。 ただでさえ非常に難しいと言われているパネットーネ作りにおいて これを扱える職人の技は並大抵のものではありません。 粉を入れて10分ほどすると、右のような感じに。 ファビオが“聞こえるかい、プパッ、プパッって言い始めたよ。 卵が欲しいって言ってるんだよ”と。 卵は何回かに分けていれないと、まとまらなくなるそうです。 右はこね始めてから30分ほどたった生地。 卵を加えながらこね続けていくと、左のような空気が入った生地に。 ここでいよいよバターを投入します! バターがすっかり馴染んだら、いよいよハイライトの澄ましバター! よく馴染んだら、生地を取り出します。こね始めてからほぼ1時間10分ほどでした。 びよよよーんと伸びる生地を発酵用のボックスに入れたら、
今日の工程はまず終了です。明日の朝までこの生地を じっくり発酵させて、第二工程にはいります。 右は明日活躍する天然酵母。3時間x2回発酵していますが、 明日生地作りの前に、3回目の発酵をさせて、その天然酵母で 第二段階の生地作りです。 (ついいつもお酒の三段仕込み見たいと思ってしまいます) 天然酵母はファビオが師匠から受けついた、100年以上経っているもの。 日々お世話して、生き続けています。イタリアでパネットーネ酵母と 言っても誰も知りません。どうやら日本だけの呼び方のようです。 本当は明日ミラノに戻るはずでしたが、予想外にも普通のサイズの パネットーネも焼きあげるというので(今回のパネットーネ作りは日本向けでは なく、彼らのヨーロッパのお客様のリクエストで小さなサイズを焼くそう)、 この際、3日目まで残ることにしました。 なおパネットーネはサイズが大きいほど、しっとりして美味しいのです。 日本向けは10月下旬からスタート予定です! まずは初日、お疲れ様でした! “どうやってホワイトバルサミコは作られるの?” ご愛用いただいている方からのご質問。 グエルゾーニの有機ホワイトバルサミコはご愛用くださる方が多く、 同じことを知りたいと思っている方もいるはず?と せっかくの機会なので書いてみたいと思います。 まずは素材のぶどうから。 グエルゾーニはバイオダイナミック農法を実践しており、 (究極の有機栽培とも言われています)土壌をとにかく豊かにすることが 彼らの重要な仕事のひとつ。 バルサミコの本場・モデナの在来種5種を栽培していますが、 ホワイトバルサミコはそのうちの白い(というかグリーン?というか)ぶどう 2種が原材料です。 トレビアーノ・モデネーゼ種と、モントゥーニ種。 グエルゾーニはお酢にするために、ぶどうを自家栽培しています。 一般的には、傷がついて食用として売れなかったものを果汁にすることも 多いようです。果汁を買い付けてバルサミコにする場合とは、 そこから大きく品質が変わってきます。 果実に傷がつく=酸化するということですから。 大切に育てられた美しいぶどうは、惜しげもなく彼らのバルサミコ作りに 使われるのです。この時点でもう美味しくないはずはありません。 次はモスト作り。 バルサミコの原材料はぶどう100%ですが、 50%がモストといい、ぶどう果汁を煮詰めた濃縮ぶどう果汁です。 収穫後、彼らの畑の一角に位置する加工場でまずぶどうの果汁を搾ります。 その果汁を今度は煮詰めていきます。 このモストづくりが、美味しさの秘密! グエルゾーニは低温でじっくり機械で果汁を回転させながら、 なんと48時間もかけてゆっくり半分に煮詰めていきます。 私が訪ねたいくつかのアチェタイア(酢醸造所)では 24時間でモストにしているところがありましたが、 それでもすごく手間をかけている印象だったので、 グエルゾーニの三代目のロレンツォがさらっと48時間と 言ったときには、ひっくり返りそうになりました。 彼にとっては、大切に育てたブドウの風味を守る方が重要なのです。 だから彼にとっては尋常ではな手間も、当たり前のことなんでしょう。。 原材料のあとの50%は、同じく自家製ぶどうから 独自につくるワインビネガー。 バルサミコの原料にするために、まず自家製のぶどうでワインを醸し、 1ヶ月ほど時間をかけてお酢にしたのが、グエルゾーニのワインビネガー。 とても珍しい特徴があります。それはワインの酸化防止剤である 亜硫酸塩が含まれていないこと! グエルゾーニはお酢のためにワインを作るので 市販のワインビネガーと違い、酸化防止剤が含まれていない きわめて稀少なお酢なのです。 ただしグエルゾーニのイタリアのラベルには 亜硫酸塩をふくむ、と書いてあります。 むむむ、なぜでしょう?? 何も加えていない100%ぶどうが原材料のグエルゾーニ。 それなのに、おかしいのですよね? 元来ぶどうの果実には、亜硫酸塩が天然に含まれているのです。 検査機関がお酢を分析する方法でなく、ワインを分析する方法で 検査する場合、天然の亜硫酸塩も数値になってしまうリスクが あるそうなのです。 検査で亜硫酸塩がでて、ラベルに記載してない場合には、 最高2000万円ほどの罰金を払う、という法律ができてしまった のです。 グエルゾーニには2000万円も罰金を払える規模の生産者では ありませんから、リスクを避けてイタリアでは記載することに なってしまいました。あまりにも理不尽で、大手に有利な 法律です。 果汁を買い付け数時間で煮込んで添加物を加える、工業製品のようなバルサミコと、 グエルゾーニの膨大な手間をかけて自然に長い時間をかけて作っているお酢が 区別できないような法律が、他にもいろいろあるのです、本当に残念ながら。 正直ものはバカをみる、ということは食品では決してあっては ならないと思うのですが。おっと、話が横にそれました、、。 ホワイトバルサミコは熟成する?しない?
ホワイトバルサミコの特徴は、ぶどうの甘酸っぱさ。 そしてホワイトの名前の通り、バルサミコとは対照的に 琥珀色をしています。 ホワイトバルサミコを、グエルゾーニの定番バルサミコ (表記していませんが、2年熟成なのです)のように 樽熟成させると、色が濃くなってバルサミコと同じように なってしまうのです。 そのためホワイトバルサミコは熟成しません。 自然の恵みそのままなので、収穫年や収穫するタイミングで 色がいつもより濃かったりすることもあります。 熱処理していない、良いバクテリアが生きたお酢です。 なので、美味しいだけでなく、身体にとても良く、 またグエルゾーニのお酢はミネラルが多く味わい深いので、 サラダにお塩が不要になります。減塩効果! ぶどうの甘さが生きているので、すし酢として使えたり 酢味噌に使えたり、牛乳に加えて甘いヨーグルトドリンクになったり。 減糖効果も素晴らしいのです! 土づくりや、バルサミコの樽熟成のことは省いたのに 長くなってしまいました。。。 使い方、楽しみ方はまた別の機会にぜひお付き合いください! ここ数年、ミラノでは小振りなカラフルトマトが手に入るようになりました。 その中でも私がいつも買うのは、ダッテリーニ種。ダッテリーニとは小さな棗(なつめ)の意。 棗のように細長くて、実もしっかり。そしてなんと甘いこと! そのダッテリーニの黄色と赤の甘くて濃厚なトマトソースがずっと気になっていて、1年前から赤と黄色のダッテリーニを栽培しはじめた、シチリアの有機生産者ニコラのところにトマト収穫時期に会いに行きました。この出張をNHKで取材いただきました。 シチリアのカラフルトマト(ダッテリーニ)が美味しい理由ダッテリーニのトマトが美味しい理由 その1 : 海から吹く風 ダッテリーニトマトが栽培されているのはマリーナ・ディ・ラグーサ。海がすぐそこにあり、海風が気持ちよく吹いています。おじいさんの代からトマト栽培に従事しているニコラたちの畑において、大切なことのひとつはこの海からの風。ミネラルを含んだ海風が吹くことで、有機栽培をしている彼らのトマトは健やかに成長します。風通しが良いので農薬を使わなくとも、病気や虫の心配が減るのです。冬の間は温室での栽培ですが、温室の横側のシートがあがるようになっていて、ときおり風をとおしながら栽培します。温かくなる5月中旬からは温室のビニールを外し、外での栽培に転換します。 ダッテリーニのトマトが美味しい理由 その2 : 有機栽培とマルハナバチによる受粉 ニコラのお父さんの代から有機栽培に転換し、できるだけ環境にやさしくトマトの自然の美味しさを引き出すように努力しています。そんな彼らは当然のように科学的なホルモン剤などを使用せず、受粉をマルハナバチにまかせています。広い温室の中を100匹ほどの蜂がつねに飛び回っていて受粉に活躍しています。蜂を媒介に受粉を行うトマト栽培は今は少なくなってきていると聞きました。 ダッテリーニのトマトが美味しい理由 その3 : 豊かな有機物を含む雨水を畑に 彼らの畑には長さ50メートルほどの大きな貯水池があり、雨水を貯めるようになっています。そこにガチョウや魚を生育させ、水中に藻や有機物が増えて栄養を豊富に含む水となります。この水を畑の灌漑に使い、土とトマトに栄養がたっぷり行き渡るように工夫しているのです。もちろん環境に負担をかけないサステナブルの視点からの試みでもあります。 ダッテリーニのトマトが美味しい理由 その4: 完熟をひとつずつ手で収穫 ダッテリーニトマトは房に何個もトマトがなり、房元から徐々に熟します。そのためひとつひとつ完熟したトマトを手で収穫していきます。人の手でしかできない収穫であり、完熟しか収穫しないことでトマトも甘さが際立ったダッテリーニのトマトソースに仕上がるのです。 なおニコラたちはシチリアで唯一“カポララート”という移民の労働搾取から人々を守り、人としての尊厳を保てる方法で仕事を提供しています。NO CAPというこの団体に加盟しているのはシチリア島で唯一ニコラたちの会社だけだそう。地中海の反対側からシチリアに、たくさんの移民の人たちが命からがらたどり着きます。農業の現場での安い労働力として違法に搾取されることがないよう、心ある経営をしています。 ダッテリーニのトマトが美味しい理由 その5: 収穫後、ただちにトマトソースに。ダッテリーニが原材料の99%! ダッテリーニは午前中収穫したら車で30分ほどの加工場に運ばれ、すぐにトマトソースにします。あるいは午後に収穫し、翌朝にトマトソースに。新鮮の素材をたっぷり使うがこのトマトソースの美味しさの大きな理由です。原材料は熟したダッテリーニ99%、海塩0.5%、エキストラヴァージンオリーブオイル0.5%。 ダッテリーニのトマトが美味しい理由 その6: 低温でじっくりと半分に甘みを凝縮、まるで家庭のレシピ トマトソースにする工程もいたってシンプル。きれいに洗浄したトマトを種と皮を取り除いてジュースだけにして圧力鍋へ。50度の低温でじっくり40分ほど調理して半分まで煮詰めます。トマトの風味が損なわれず、甘みが凝縮しているのです。その後、鍋を移してオリーブオイルと塩を加えて少し煮たら出来上がりです。 カラフルトマトの召し上がり方ダッテリーニは、“小さな棗”という意。イタリアではその際立った甘さとしっかりした歯ごたえの良さで最近ますます人々に愛されている品種です。何世紀も前にアメリカ大陸からイタリアにトマトが伝わったとき、もともとトマトの原種は黄色だったそう。 赤いダッテリーニ:スイートレッド スイートレッドは、甘みがダイレクトで凝縮していてピザソースやパスタソース、ケチャップ代わりにもとても美味しく召し上がっていただけます。例えばモッツアレッラチーズに添えて、オリーブオイルをかけるだけで幸せな味わいに。。。お砂糖を加えてないので、安心してご利用いただけます。 黄色のダッテリーニ:ゴールデンイエロー ゴールデンイエローは甘みと酸味が絶妙で、魚介類にもお肉料理にもよく合います。 赤いスイートレッドと同様に、抗酸化作用が高く、植物繊維、カリウム、ビタミンC、カルシウムも豊富です。 どちらのトマトソースも、まずシンプルに何も加えずにパスタと一緒に召し上がってみてください。 方法は簡単。フライパンに入れてトマトソースを温め、そこに茹であげたパスタを加え、良質のオリーブオイルをかけてよく和えます。お皿に盛り付けたら、お好みでパルメザンチーズを削ったものをたっぷりと。 シチリアのダッテリーニトマトの風味を満喫していただけますように! このトマト畑からすぐ近くDonna Lucataドンナ・ルカータの洗練された魚料理のレストランIl Consiglio di Siciliaのアントニオシェフにお願いして、黄色のダッテリーニを使ったお料理を指南いただきました。
レシピはまた改めて。 今年の2月にパンテレリア島を訪れたのは、忘れがたいレモンマーマレードの生産現場を訪れるため。生産者エマヌエラさんを初めて訪ねたのは、少し遡って昨年6月。輸入をはじめたばかりだったケッパーの畑を見せてもらい、オレガノを乾燥させるところに立ち会い、野生のフェンネルシード の香り高さを確かめに島を訪ねました。 その出張の折に、彼らの別の品々もいろいろと味見させていただき、味わった中でうわっと感動したのが、島の琥珀色のぶどう“ジビッボ”のジャム(砂糖を足さないので、日本ではジャムの枠にはいらずにスプレッドという名になりました)と、ジビッボのモスト漬、そしてレモンマーマレードの3品でした。 以前シチリアで忘れがたいオレンジマーマレードに出会ったことがありましたが、その生産者に翌年の収穫でできた新しいサンプルを送ってもらったところ、まったく違う味、まったく違う食感、まったく違う品物になっていた、、、という苦い経験をしたことがあります。 そのため小さな生産者が作る手作りの柑橘系のマーマレード(あるいはジャム)で、ペクチン不使用となると、用心に用心を重ねて選ばねばなりません。蜜のように美味しいジビッボぶどう100% であれば、どうやっても美味しいでしょうが、レモンは以前の経験からも、どうしても慎重にならざるを得ませんでした。そのため、ジビッボの素晴らしい2品だけ先にご紹介しました。 レモン収穫が巡ってきて、レモンマーマレード作りに立ちあった今年2月。その美味しさの秘密は想像を超えた手間と愛情だといういことを実感しました。この様子は、NHKの番組に取材していただいたので、ご覧くださった方もいらっしゃると思います。 今日のブログでは、レモンマーマレードについて書いてみようと思います。 パンテレリア島のレモンは、ルナーレ(月の意)という品種のレモン。生産者のエマヌエラさんとカルメロさん。 パンテレリア島 のレモンマーマレード 美味しさの秘密おいしさの秘密 その1: 火山の島パンテレリア の土壌 パンテレリア島は、シチリア島から飛行機でさらに南西に45分程、シチリアとアフリカの間に位置する、人口約8,000人程の小さな島。火山が噴火してできた島であり、ゴツゴツとした岩が大地を覆い、黒い大地が広がっています。この土壌が火山質のミネラルを豊富に含み、特別な養分が島の作物を特別な風味に仕上げているのです。シチリア産のものとさえ一線を画す、力強い素材力=パンテレリア品質はこの火山島の肥沃な土地によるものなのです。乾燥した土壌も、レモンを風味豊かにするそうです。 おいしさの秘密 その2: 自然と人の智慧の融合・アラブの庭 パンテレリア 島は強風の島。一年のうち300日ほどが強風に見舞われると言われています。果樹は、Jardino Arabo ジャルディーノ・アラボ "アラブの庭"と言われる 、岩を積み上げて壁を囲った小さな庭で育てられます。パンテレリア の人々は、何世紀も昔からこのアラブの庭の中に、大切にレモンの樹やオレンジの樹をゆったりと育て、まるで人格を持った人間のように大切に扱っているのです。名前もつけたりしていたこともあるそうです。なんだかとても素敵です。 アラブの庭の背の高い岩壁は、強風からレモンを守り、強い日光でレモンの樹が焼かれることを防ぎます。庭の中の温度と湿度を壁の外側の厳しい自然環境よりもおだやかに保ち、レモンの樹の健やかな成育を助けるのです。大自然に人の手と智慧を入れることで、おいしいレモンの実をみのらせるのです。 おいしさの秘密 その3: 酸味が少なく、皮まで美味しい“ルナーレ種のレモン” ボノモ さんの育てるレモンは樹齢100年のものも。パンテレリア 島のルナーレ(月の)という品種のレモンは、その名の通り、冬の間は毎月のようにたわわに実にをつけます。皮の部分、白いワタの部分、すべて美味しく食べられてしまうレモンです。火山の島・パンテレリアだからこそこうしたレモンが育つそうです。 おいしさの秘密 その4: 自分の庭のレモンだけ。熟し加減をみて収穫、その後すぐに加工。 ボノモ さんのレモンの樹は10本。冬の間その10本が毎月のように豊かに実りをもたらします。ボノモ さんは近くにあるレモンの樹々の様子を常に見守り、適切に熟したときを見極めて収穫、そしてできるだけ早く加工します。朝収穫してその後すぐに加工するか、あるいは前日の午後収穫して皮を丁寧に剥き、冷蔵庫に保存しておくかのどちらか。樹から実を外しマーマレードに加工するまで、ほぼ12時間以内。収穫から加工まで時間が短ければ短いだけ、自然の恵みそのままの美味しいマーマレードに。当たり前に自分たちのレモンしか使わない、そして酸度が同じになるよう同一のレモンの樹の実しか使わない、彼らの姿勢を尊敬し、またそのことに感謝しています。 おいしさの秘密 その5: 農薬、肥料ともに不使用のレモンを使って 農薬も肥料も不使用。自然の力だけで育ったレモンが原材料です。なお有機JAS認証の取得は小さな生産者であるボノモ さんに費用的にも事務作業的にも大きな負担になるため、あえて手続きをお願いしていません。 おいしさの秘密 その6: 家族に伝わるマンマのレシピ。手間と愛情をたっぷりと。 ほぼ手作りのボノモ さんのレモンマーマレード。レモンの皮をポテトピーラーでひとつずつ丁寧に剥き、痛んだところは丁寧に除去します。皮は皮で10分ほど水で煮ます。柔かい実の部分は5分ほど煮て余分な苦味をとり、その後この実をナイフで切って種をひとつひとつ取り除きます。手間がかかりますが、愛情こもった工程を経てなめらかな味わいが実現。機械に頼るのは皮と実を別々に茹で(茹で時間が違うため)て一緒にし、フードプロセッサーで細かくする工程ぐらい。 お砂糖もレモン100gに対し30gと甘さ控えめで、素材のレモンが持つ甘みを活かしています。 フードプロセッサーにかけたあとも、ボノモ さんは残っていた種を丁寧にひとつひとつ取り除きます。種が入っていても味は変わらないけれど、食感が少しでもよくなるように、と。本当に気が遠くなるほどの丁寧な手作業を重ねて、秀逸なレモンマーマレードが出来上がることを実感しました。その手間は、私の想像をはるかに超えていました、、。ボノモ さんのお母さんは、いつもこの方法で家族のために作っていたそうです。まさに愛情と手間をたっぷりかけた、マンマの味なのです。 ここをクリックすると、編集できます。 パンテレリア 島のレモンマーマレードの召し上がり方「世界は欲しいものにあふれている」の番組中に、レモンマーマレードを味わってくださったJUJUさんがドレッシングに入れても美味しそう!とコメントしてくださいました。なるほど!すごい発想力。JUJUさんはお料理上手に違いない!同じ番組の中では料理研究家のフランチェスコさんが、鶏のささみに合わせてくださいました。 番組にも登場してくれたシチリアの洗練された魚料理のレストラン「Il Consiglio di Sicilia」友人のシェフ・アントニオは、レモンマーマレードにレモン汁と塩を少し加えてソースにし、オリーブオイルで和えたカンパチのお刺身に合わせ出してくれました。美味しかったなぁ。 ボノモ さんたちはレモンマーマレードをチーズと合わせることが多いそうです。またレモンマーマレードを使った焼き菓子も作ってくださいました。月並みではありますがバタートーストに、ヨーグルトにやっぱり最高です。 7月二回に分けて入荷予定です。ぜひみなさまに味わっていただけたら嬉しいです! |
Casa Morimi
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