昨日、有機フレッシュトマトソースやバジルペーストの生産者を南トスカーナ・マレンマを訪ねてきました。
極めて効率的にラインが組まれた製造過程をみながら、先日ピエモンテのマイクロブルーワリー「バラダン」を訪ねた際に初めて耳にした、“モダンクラフト”という言葉を思い出しました。なにかというと、人の手が優れたこと以外は、できるだけ機械化した方がよい。ただ経験からの人のノウハウ部分は、絶対に機械に譲るべきではない、とのこと。 南トスカーナの取引先とはお付き合いして10年ほどだと思いますが、今回またさらにラインの品質管理や生産が洗練されているのをみて、さすが伸びている会社は違うな、と思いました。まさにモダンクラフト。“Artigianali 職人の”という言葉がとても愛されているイタリアではありますが、たしかに機械の方が良い結果を導きだす工程はあるわけです。 日本ではここ数年で品質管理室が多くの会社に設けられ、お客様から要求される証明書や書類を用意することが多くなってきました。いまのところ、問題なく小規模な生産者も対応できていますが、すべての会社がメタルディテクターのような設備を導入できるわけではなく、この傾向が過剰に進むことがないことを祈っています。 また、すべての工程が手仕事なされる仕事は、その分どうしても割高になります。小規模な生産者は、素材にもこだわることも多いのですし、時間をかける丁寧な仕事をすることで、薬品に頼らないケースが多いですから、その分もやはりコストがかかります。素材も、大手の原材料購買力と比較になりません。そう考えると、ますます彼らの仕事の価値をしっかり発信していかなくてはならないと感じています。生産者を訪ねる旅を企画したいと考えたのも、実際に現場をぜひ見ていただきたいと思ったことがきっかけです。 今週合意となった、ヨーロッパと日本の貿易合意は輸入者としては素晴らしいニュースで、自由貿易に期待したいと思います。一方で日本での生産者の方々の状況はどうなのか心配ですが、日本の素晴らしい食材もより簡単にヨーロッパに届くことになればと願っています。アメリカなどの保護貿易の傾向が色濃くなる中、ほぼ1年というものすごいスピードで合意に達した、日欧貿易合意。市場規模は世界の貿易の30%を占めると聞きました。こうした世界規模の市場が広がれば広がるほど、Prodotti Artigianali 職人的商品(人のノウハウや伝統が活きていること、時間をかけることで良い品質を実現すること)の手仕事の価値をより語り、伝え、小さな市場が消えないようにすることが大切だと感じています。自分たちができることは、あまりにも小さく、限られていますが。 昨日訪れた製造現場のラインの横に並べられた原材料が入ったバケツの数々。イタリア産の松の実を量るのは、人の手。トマトソースの製造においては、トマトを選り分ける手はまだ健在。モダンクラフト、されど手が介在する風景に心底ホッとしたのでした。
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